2010年 01月 18日
蔵王高等学校講師 「働くという事」 |
今回で3回目の蔵王高校講演。呼ばれれば喜んで行きますよ。
でも、今回はちょっと変則的です。隣に座っている彼は、おなじみスタッフの小室君です。
実は彼、蔵王高校の卒業生なのです。
「OBからリアルな現場の話しを聞かせたい」というのが先生のリクエストだろう。
そう思った私はさっそく彼に内容を話して、講話の大まかな中身を考えさせました。
1日たって彼と打ち合わせをした時、明らかなテーマとのズレに気が付き、やり直しを命じました。明らかに彼はこのオーダーを理解していない。
実は今回の講演にはもう一つの「裏テーマ」があると考えていました。と言うよりは期待です。
この度の機会は彼にとって大きな学びの場になるとにらみ、あえて手を差し伸べる事を良しとしませんでした。
彼は苦しんだと思います。社会人経験を積んだ後に峩々に来て3年半が経過しようとしている今、こんな基本的な事もわからず仕事をしてきたなんて、言いたくない。きっと彼はそう思っているのでしょう、自分の事を正当化する弁解ばかりがならび、人前で話すレベルには程遠い内容でした。
もう時間が無い。私が考えた内容の話しを、あたりさわりのない一般論を彼に話させよう。そう頭をよぎりました。考えてみればおそらく、そうやって今まで周囲は彼の事を大人にし切れなかったのだろう。それは無理もない。彼もそれになれていたのだろう。
でも、やはり彼には自分自身の力で乗り越えてほしい。
その強い思いは曲げられませんでした。
彼とは沢山の困難な山のトラブルを共に乗り越えてきた信頼関係があります。
だからこそ、もっともっと仕事の奥深さを学んでほしいとよけいに思います。
私は彼を突き放してみました。やり直し、今までの原稿をゴミ箱に捨てろと指示しました。
「わかりました」と応え、しばらくして私のもとへ小走りに向かってきました。
彼の口から私の予想通りの言葉が出てきました。
今まで、今日の今まで仕事に自分の意志やプライドを持つ事ができませんでした。
働くという事の意味など一度も考えて事がありませんでした。
でも、この講演を通して自分を変えたい。
そう言った彼は、自分の生い立ちから高校生活、自衛官時代などの社会経験を私に語りだしました。
狭い温泉街に育ち、周囲にもこのような学びの環境が無かった事。
志をたてるべきタイミングを逃していた事も。
「畏れ」というものを知らなすぎた事。
彼は一言一言かみしめながら、ただ一点を見つめながら瞬きもせずにいました。
これで良いのです。私は東京時代に恩返しができないほどお世話になり、このような事を教えてくれた大切な上司がいます。小室とかつての自分がだぶりました。心から感謝しました。
私は小室君にそれをしっかりと整理するようにアドバイスしました。
そして、考えが浅はかだった自分を正直に勇気を持って高校生に言うように告げました。
彼にとって母校の生徒に話すたった数十分が、ブレイクスルーになる事を私は確信していました。
当日、案の定小室君はやりきりました。良い話しをしてくれたと思います。
彼はみんなに必死に言葉を届けていました。
そして自分自身に向かって、未来の自分が言葉を届けている。
俺はこうなりたい。世の中の人の役に立ちたい。社会人とは働く事でしか表現できないと。
本当に良く頑張った!聞いているこっちもヒヤヒヤしながらでしたが、本当に誇らしかった。
彼はこらから加速度的に成長する事でしょう。
でも、今日をもって私は学びの場を手放しに彼に提供する事はないでしょう。
自らが気付き、学び、自身の成長になによりの喜びを感じられるかは自分次第です。
人前で話しをする事はすごく大変です。
まず、自分の考えがまとまっていないと話しにならない。
どんな相手なのか、本番までほとんどわからない。
東京時代も最大で120名の前で話しをした経験があります。
仕事上、スピーチなどの機会も多いです。
でも、決してなれる事はないです。
毎回緊張して、吐きそうになります。生徒さんが4人でも逃げ出したくなります。
でも、伝えなきゃ!少なくとも望まれてここに呼ばれているのだから。
そう思って一生懸命、自分の全てを出し切ります。
そして最近、こういう事は嫌いではない事に気が付きました。
話せば話すほど、内容が整理され単純化していきます。
くだらない事ほど話しは複雑化するものだ。とも気付きます。
また「自分を捨てる」という観点に達する事があります。
話しを押し付けるのではなく、納得してもらう。
説得では決してありません。共鳴です。
そういう時間を欲している自分がいる。
今年は高校でも大学でも、呼ばれたらどこでも行きますよ!
1つでもお役に立てる事があれば、何でも話します。
誰かの役に立ちたい。この峩々というフィールドを最大限に活かして!
by gagaonsen
| 2010-01-18 16:54
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