2008年 01月 28日
師弟 |
吹雪のある日、私はあるお客様の来館を心待ちにしていました。
一年に一度、元部下の働きぶりを見に来て下さる私の恩師です。
奥様のお誕生日のお祝いを峩々で過ごし、ゆっくりと体を休めてお帰りになります。
東京で4年お世話になった会社の当時本部長で、現在は独立され飛躍を続ける時の人。
OBも含めると何千人という部下を統括・指導してきた人物です。
彼がフロアに顔を出すと、それだけで100人近くいるその空間が緊張感でピーンと張り詰めるような人です。
私は在社中会話を交わした事がほとんどありませんでした。
あったとしても緊張してほとんど覚えていない。
それは多分入社1日目に怒鳴られ、まさに格上ランカーに打ちのめされた若手のボクサー。
「フレッシュマン」などと言う言葉に胸を躍らされていた学生が受けた洗礼だったのかもしれません。
そのパンチの破壊力にただただ「恐い人」というイメージが付きまとったのかもしれません。
だから始末書と退職願を持って行った事くらいしかはっきり思い出せません。
でも私の人生の中で「存在」してもらわないと困る人ランキング、堂々のナンバーワンです。
好きとか嫌い、損とか徳、善とか悪に全く関係の無い存在感があります。
思ってくれる人がいる事、思いを馳せる存在がいる事に感謝しています。
誰しも何気ない一言に救われた事はあると思います。
その一言をかけてもらった事で、長年の苦労が吹っ飛び明日からの希望の光がさして来る。
そんな人が自分の周りに何人いるだろうか?
その夜私にとっての大きな儀式が、毎年行われます。
今まで雲の上の存在だった元上司が、なかなか手に入らない貴重な日本酒を私に注いでくれます。
一年で一番思いのこもった小さな宴会が始まります。
彼はただ黙って酒をすすめる。私はそれをありがたく、ただありがたく頂く。
「今日まで良くやった、明日からまた頑張れ」と毎年同じ台詞に涙を流す。
今回はもっと自分を解放して沢山の人に会うように言われました。
心を開放すればどんな苦言も身になる。
「今、自分は試されている」と思う事ができる。
私は写真家の立木義浩さんに言われた言葉を思い出しました。
「人生は学校である。そこでは幸福よりも不幸の方が良い教師だ。」と。
今日から良い師と友、良い教師との出会いを心待ちにしていきたいと思います。
by gagaonsen
| 2008-01-28 13:07
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